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飯田哲也「RE100への途」

第6次エネルギー基本計画(素案)の読み方 RE100を実現できるか

2021.07.29

第6次エネルギー基本計画については、さまざまな駆け引きが政府部内であり、秋の解散後に公表がずれ込む噂もあったのだが、このほど「素案」が公表された(注[1])。2030年の再エネ目標36〜38%に注目が集まっているが、そこは本質ではない。

この「素案」のもっとも重要なポイントは、「再エネ最優先」が盛り込まれたことだ。さらに、中途半端な書き方ではあるが、「柔軟性」というキーワードも入った。これらは、河野太郎行政改革大臣と小泉進次郎環境大臣、そして秋本真利自民党再エネ議連事務局長の3名の連携による貢献だ。前回の第5次エネ基(2018年)は、スカスカの内容に羊頭狗肉の看板として掲げられた「再エネ主力電源化」が唯一評価すべき点だったが、今回の第6次の「再エネ最優先・柔軟性」は、それを実体化しうるキーワードである。もう一つ、政府部内の駆け引きで重要な「成果」は、あまり注目されていないが、原発新増設が入らなかったことだ。ここでも、前記3名の連携がもらたしたものだ。
 

とはいえ、内容はお粗末すぎる。指摘すればキリが無いが、以下、列挙する。
 

■太陽光が桁違いに少なすぎる。太陽光はすでに65GWが設置済みで、前回のエネ基の2030年目標64GWを越えている。これを100GWに「上方修正」するのだが、現状の1.5倍に過ぎない。太陽光は、今や最も安いエネルギー源となり、今後のエネルギー転換と脱炭素の主力となるだけでなく、過去の経験でも短期間に成長することが明らかであるから、数羽員程度を掲げるべきだろう。太陽光に比べて時間の掛かる風力に消極的なのはやむを得ないが、太陽光と並んで、もっと高い目標を掲げることが出来だろう。

■水素と原発再稼働への拘りは、もはや経産省のビョーキだ。水素は、太陽光と風力を飛躍的に拡大する中で、一次エネルギーに拡張(セクター・カップリング)するために重要だが、日本の水素は、燃料電池など旧い考えを今なお引きずっている。

■経産省の間違った政策のアリバイ作りとして「容量市場」や「汚染水放出」などが使われている。

 

他方、本来書かれるべき重要なポイントが書かれていない「重大な欠陥」がある。世界で一気に進みつつあるモビリティ大変革に関して、何も書かれていないのだ。電気自動車化(EV化)は、予想を超えて一気に進みつつある。これはエネルギー基本計画にも重要な要素であるだけでなく、日本経済の屋台骨である自動車産業を揺るがしかねない変革でもあるのだが、いっさい触れられていないことは、このエネ基の最大の欠陥の一つだろう。

総括すれば、再エネに関して「再エネ最優先・柔軟性」が盛り込まれたことは、重要な進展であり高く評価したい。とはいえ、全体を眺めれば、評価すべき「哲学」が見当たらず、世界で急速に進展しつつある大変革がまったく見えていない。これらは、いま私たちが目の当たりにしている、新型コロナ禍への無策無能やプランBなく突進した東京オリンピックの運営のお粗末さで露呈している状況と通底しており、日本の政治行政を根底からアップデートする必要がある。

 

 

 

[1] https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2021/046/046_004.pdf

 



飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー 
国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生まれ

 

 

 

 


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