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飯田哲也「RE100への途」

雪崩を打つEV化と取り残されるEV大転換

2023.01.31

昨年の世界全体での電気自動車(EV)の新車販売が前年比60%増となる1050万台・シェア13%と速報された(プラグインハイブリッド車を含む、以下同)。中国や欧州、米カリフォルニア州などが先行し、自動車大国の日本は2%未満と大きく出遅れている。世界全体の自動車販売が微減する中、既存の化石燃料車(ガソリン・ディーゼル)は比率も販売総数も落としており、この数年でEVに逆転される見込みである。

 EV化で先行するのはノルウェーで、新車販売の9割がEVとなっている。ドイツの昨年のEV 販売比率は31%(前年比22%増)だったが、12月単月では55%を占めた。欧州全体では昨年の自動車販売総数が7%低下する一方EVは20%を越えた。世界最大の自動車市場を持つ中国は、国を挙げてEVの製造と普及を後押ししており、昨年の自動車販売総数が4%増のなかEV販売は前年比93%増・690万台で、世界の3分の2を占め、シェア25%を超えた。米国は昨年の自動車販売総数が8%低下する一方、EVは前年比65%増となるシェア6%、ゼロエミッション車を推し進めるカリフォルニア州では18%に達した。

急激なEV化は、ロシアのウクライナ侵攻に伴う化石燃料コストの急騰や欧州がリードする脱炭素政策、そして近年の蓄電池を始めとするEVコストの急落と技術進展などが後押ししている。米テスラ社がリードし、中国の新興企業が追随し、それを欧州車勢や韓国車勢が追いかける構図だが、日本車勢は大きく出遅れてしまった。むしろ、EV化に慎重な発言を繰り返すトヨタに対しては、世界中の環境団体から厳しい批判が寄せられている。

EV化しても既存の石炭火力発電から電力を使うなら二酸化炭素が減らないとの批判もあるが、現時点でも、世界の95%以上の国・地域では二酸化炭素削減に繋がるとの報告がある上、今日、電力分野も再生可能エネルギーへの急激な転換が加速しているため、そうした批判は的外れである。また、リチウムやコバルトなど蓄電池の資源枯渇や環境影響は当然の懸念だが、これに対してもリサイクル・資源の効率化・代替素材などの組合せで、解決されるとの見通しがある。

EV化でも再エネ化でも大きく後れを取ってしまった日本は、気候危機対応でもエネルギー危機対応でも遅れを取ってしまった。これは化石燃料輸入コストの高騰というリアルなリスクとして私たちを直撃している。気候危機対応でも過度な原発依存を掲げており、別のリスクを国民に押しつけようとしている。いずれも完全に政策の失敗である。加えて、世界のEV化への大きな遅れは、日本の最大の基幹産業でもある自動車産業の足元も揺らがしかねない。実際に、化石燃料車しか売り物のない日本の自動車メーカ各社は販売シェアを急速に落としている。環境リスクを軽視したツケが、産業・経済リスクに繋がったといえよう。

 

 

飯田哲也 環境エネルギー政策研究所 所長

 

 



飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー 
国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生まれ

 

 

 

 

 

 


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