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飯田哲也「RE100への途」

「地上の太陽」より「宇宙の核融合」

2022.12.28

暮れに核融合がにわかに注目を集めた。米研究所が初めて「投入を上回るエネルギーを発生」させることに成功したと発表したからだ。「地上の太陽」「科学的に大きな進展」「気候危機やエネルギー問題の解決可能性」などメディアがひとしきり賑わいを見せた。GX会議に核融合を含めていた岸田首相にも追い風に見える。

 しかしこれは空騒ぎに過ぎない。第一に、核融合反応に用いたレーザーの消費エネルギーで見ると1%以下しか発生していない。第二に、今回の反応継続は数ナノ秒で、現状1日1回のレーザー照射が精一杯だ。これを何時間も何日も何年も継続できるとは到底考えられない。第三に、今回用いた「重水素とトリチウムの凍結金シリンダー」の燃料製造が極めて高コストで、大量生産や商業化はおよそ非現実的である。第四に、仮に大量にエネルギーを生み出せても、原発と同じ蒸気発電するしかなく、そのコスト低下は期待できない。

 他方、近年コストが急落してきた太陽光発電と風力発電が、世界のほとんどの国や地域ですでに最も安いエネルギー源になっており、今後もコストが下がる見込みだ。これらは太陽エネルギー、つまり「宇宙の核融合」である。今後も技術学習効果によるコスト低下が見込め、資源量も人類の使っているエネルギー量の数千倍と膨大にあり、半永久的な持続可能なエネルギー源であり、放射能もCO2も出さない「真の持続可能なエネルギー源」である。

先月お伝えしたとおり、太陽光発電と風力発電を中心に2050年までに世界全体を自然エネルギー百%にすることが可能かつ最も経済的で、気候危機1.5度目標にも間に合うとの考えが科学者の本流になったとの報告もあった。

これからの人類のエネルギー源はこの「宇宙の核融合」(太陽)であり、「地上の太陽」は無用であると科学技術史的にすでに決着が付いている。

 

飯田哲也 環境エネルギー政策研究所 所長

 

 



飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー 
国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生まれ

 

 


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