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飯田哲也「RE100への途」

RE100とEV①「トヨタの逆襲」

2021.12.24

電力のRE100(再生可能エネルギー100%化)とモビリティの電気自動車(EV)化は、文字どおり「クルマの両輪」である。そのEV化で、日本は各自動車メーカも国内市場の普及でも、世界から大きく遅れを取っている(図1)。この20年以上もの間、トヨタと経産省が水素燃料電池車(FCV)に前のめりである反面、EVに消極的だったことが一因であろう。

 

なお、国際的に「EV」とは「バッテリーのみのEV」(BEV)とプラグインハイブリッド車(PEV)を指すが、日本では、従来からのハイブリッド車(HV)やほとんど普及していない水素燃料電池車(FCV)を含めて「電動車」と呼び、メディアもそれに倣っている。
HV を含めると、日本の新車の「電動化率」は40%近いが、EVに絞ると世界最後発の1%に落ちる。

そもそも経産省とトヨタが旗振り役のFCVは、ほぼ「日本のガラパゴス」と言ってもよい。技術的にも高コスト・未成熟、インフラ整備もほとんど整わず、グリーン水素の供給もおぼつかない。井戸元から車輪までの総合エネルギー効率でも、73%以上のEVに対してFCVはせいぜい22%と大きく劣る(図2)。今後も、世界的な傾向からみてまず主流になることはありえないが、経産省とトヨタが今なお固執し、地方自治体を含む行政文書には「クリーンエネルギー自動車」の筆頭に上がり、最大スポンサーのトヨタに上目遣いのメディアでは「ヨイショ」が続く。


こうして、「トヨタ・フィルターバブル」に覆われた日本では、国内で流通する情報が操作・管理・歪曲され、大手メディアや地方行政がそれに従う状況といえよう。豊田章男社長は「EV否定派ではないが、全EV化は日本のエネルギーと雇用を考えると間違っている」とも発言している(注[1])。しかし、そもそもトヨタや日本の都合をテスラや世界が待ってくれるはずもなく、世界で起きている「不都合な真実」から目を背けているだけではないか。半導体・家電・液晶・太陽光と次々に敗れ去った日本の、最大かつ最後の基幹産業である自動車産業の危機という「日本沈没リスク」に危機感が広がらない。

そのトヨタが、2021年12月14日、2030年までに4兆円を投資してEV生産を350万台とする目標を豊田章男社長自ら発表した(注[2])。COP26に向けてEVに消極的な姿勢が批判されたトヨタが、最後発ながらEV化に動き出したかたちだ。海外の事情に疎い日本のメディアは色めき立ったが、テスラが掲げる「2030年2千万台」の目標の前には色褪せて見える。

とはいえ、この「トヨタの逆襲」が成功するのか、次号から見てみよう。

[1] 「トヨタ豊田章男社長「すべての疑問に答える!」文藝春秋2022年1月号(2021年12月10日)
https://bungeishunju.com/n/n7eb2b7cd12bc?magazine_key=m90004adde5d7

 

[2] トヨタ自動車「バッテリーEV戦略に関する説明会」2021年12月14日 
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/36428939.html

 


 

飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー 
国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生まれ

 

 

 

 


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